【子育てはなぞときQ&A集】抱っこが難しい時に抱っこをせがまれる(5歳)

※この記事は2018年に開催された「幼い子との接し方としつけ」講演&相談会の内容を抜粋し編集したものです。

※英語・中国語版あり

 

Q. 抱っこが難しい時に抱っこをせがまれる(5歳)

 

混んでいる電車の車内やエレベーターの中など、他の人に足が当たってしまったりして抱っこが出来ない時に限って、大声で抱っこをせがんできます。「ちょっと待ってね」と言っても絶対に譲らないのですが、どう対応すればよいのでしょうか。


 

A.

抱っこというのは、子どもが一番安心できる形なんです。

 

新聞で小学1年生の子どものことについてお母さんが投稿していたんですが、「今日は思い切りお父さんお母さんに抱っこしてもらってきてください」という宿題だったというんです。それでお母さんが抱っこして子どもの様子を学校に報告するらしいんですけど、とっても照れて恥ずかしそうながら、とても嬉しそうにしていた、と書いてありました。

 

抱っこというのは、一番いいコミュニケーション。言葉が介在しなくても一番安心できる形なんです

 

東日本大震災の直後、私は1歳半健診と3歳健診で4カ所か5カ所の保健所に行っていたんですが、小さい子はもとより4歳5歳の子でも抱っこを求めたという話を聞きました。

 

震災が3月で、その後の10月、11月、12月の3歳児健診でも、「子どもがとにかく抱っこを求めて鬱陶しい」「どうしてこんなに甘えるのか」という声をとてもたくさん聞きました。

 

親にとっては地震は過ぎたことで日常に帰ってきているけれど、子どもにとっては現在形で怖くて余震で揺れたり、報道があったりする度に抱っこということが多かったんですね。

 

ある相談では、3歳にもなる大きな子が、お母さんのお腹の上に乗って寝ると。お腹に乗って寝ると抱っこして寝るということになるので、それが一番安心で子どもにとっては必要な形だから、お母さんがちょっとずらしてお子さんと全身が密着出来る形にしてあげたらどうでしょうということで、解決していただきました。

 

抱っこというのは、子どもにとって安心安全を確保する一番いい方法なので、年齢にかかわらずしてあげて欲しいと思います。

 

赤ちゃんは四六時中抱っこしてもらえる。1歳でもそうですね。

だけど3歳過ぎたら特別なことでもない限り、また特別なことがあっても抱っこしてもらえない。だからどうしても「抱っこ」と求めてきます。

特に妹や弟を抱っこしている時に「抱っこ」と言ってくることが多いですね。「私と赤ちゃんとどっちが大事なの」と。

 

だからそういう時は、小さい子を抱っこしていても「抱っこしてほしいんだね、わかったよ」と言葉だけでも受けとめてあげてください

「抱っこしてほしいと言ったらお母さんが受け取ってくれた」、それだけでもわかってもらえたとすごく気持ちが穏やかになる。

 

もう一つ言うと、子どもに「待って」と「後で」はタブーです

「抱っこしてほしいんだね、わかったよ」と言うことが大事で、「後でね」「待っててね」は待てない。

スルーされるとわかっているので「抱っこしてほしいんだね、抱っこしてあげるよ、わかったよ」、

それでまた抱っこと言ったらと「そうだよね、抱っこしてほしいんだよね、わかってるよ」という風にして

言葉で答えてあげる。

 

それから下の子に対して「お兄ちゃんお姉ちゃんが抱っこしてほしいんだって、ちょっと代わってね」と言って抱っこしてあげると、抱いてもらったことで満足するので長くしなくて済むんです。

「後で」「待って」と言われて痺れが切れてから抱っこすると、しがみついて離れなくなることもあります。

 

下の子が代わるのを嫌がった時は、左右半分ずつにしたり、前に赤ちゃん、後ろに上の子をおんぶしたりしてあげる。お母さんがわかってくれた、受け入れてくれたということが親の愛を感じる一番いい方法なんですね。

 

抱っこしてもらいたい=愛を実感したいということなので、ほんのちょっとでもいいから惜しまないでください。

 

電車で混んでいる時なんかは「ちょっと失礼します、今下の子が出来て赤ちゃん返りなんです」みたいなことを一言言うと、周りの人たちがすごく優しくなるんです。

そんな大きいのに抱っこ抱っこなんておかしいでしょ、みたいなこと言われたら「狭いところすみませんね」と。

 

それから人見知りの時も抱っこが必要なんです。人見知りというのは、人が怖いわけです。そういう時は外に向かう抱っこではなく、お母さんに内側に抱っこしてもらうと、人に直面しないで済むのでちょっと楽なんです。

 

その辺のところも「うちの子ちょっと人見知りの時期で」とか「下に赤ちゃんが生まれたものですから」と一言言いながら抱っこしてあげると、子どもが責められ感がないのと、周りがあたたかくなっておしゃべり好きなおばさんなんかがうちもそうだったんですよなんて言ってくれて場が和む。

そうしてお母さんが優しい気持ちになってほんわかすると、抱っこなんて必要なくなるんですね。だからスルッと降りていくことがあります。

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アドバイザー:内田良子氏(児童心理カウンセラー)

 

73年より東京都内数ヶ所の保健所にて相談活動を続け、98年から「子ども相談室・モモの部屋」を主宰し、不登校、非行、ひきこもりなどのグループ相談会を開いている。立教大学非常勤講師、NHKラジオの電話相談「子どもの心相談」アドバイザーも経験。全国各地の育児サークル、登校拒否を考える親の会、幼稚園などでも講演多数。著書『カウンセラー良子さんの子育てはなぞとき』、『幼い子のくらしとこころQ&A』『登園渋り登校しぶり』