※この記事は2018年に開催された「ワハハ先生に聞く 子どもの病気への考え方と対応のしかた」講演の内容を抜粋し
編集したものです。
※ 英語・中国語版あり
本当に効く咳止め薬は、ない
子どもが医者にかかるとなると、吐く、下痢、咳、鼻、熱といった症状を訴えてくるのですが、
咳止めがまた本当に効かないんです。
「こんなに咳が出てて喘息や肺炎になったらどうしましょう」と言われるんですけど、喘息や肺炎になったら治療法がある。
でも普通の咳というのは、本当に止められないんです。
効く咳止めがないから、医者はしょうがなくシールを出すことがあります。
あれは気管支を広げる薬ですから、喘息の子には効きます。でも普通のコンコン言う咳にはほとんど効いてない。
子どもの場合、例えば3、4週間咳が続いていて、咳以外の他の症状がなかったら基本的には大丈夫です。
長ければ長いほど大丈夫と言っていいと思います。
大人の場合、2週間以上理由の分からない咳が続いたら病院に行けと言われているのは、肺がんの可能性もあるからです。
大した咳じゃないんだけど軽い咳が続いているという時に、それが肺がんの兆候だったりすることがあります。
肺がんはレントゲンである程度見えるようになっていたらもう手遅れといいますから、
軽い咳が出るくらいのところで見つけたいので、大人についてはそういうふうに言うのです。
でも子どもについては肺がんはないと言っていいですから、そうすると長いこと続く咳となると、百日ぜきくらいになる。
百日ぜきの場合
百日ぜきの場合は、最初の2週間くらいは普通の咳だけど、2週間経ったところからひどくなって、
食べたものも全部吐いたり、ちょっとした刺激で咳が出はじめるようになるのです。
昼間は咳が出るけれど夜は出ないというのは、心配ないです。
百日ぜきと喘息は、夜が大変なのです。
百日ぜきは夜も眠れないという状態で、音楽用語でスタッカートの咳と言われるんですけど、
要するに一度咳が出はじめたら息ができないんです。
そうして、最後に咳が終わった時ヒューっと大きい音がして終わりになるというものなんですが、
これは本当に大変で、体が弱ってしまいます。
大人の百日ぜきは軽いことが多く、ほんの軽い咳だったりします。
ただ大人がかかった百日ぜきが赤ちゃんにうつるということが時々あるので、本当は大人が気をつけたほうがいい。
子どもの場合、百日ぜきは本当に少なくなりましたし、特徴のあるわかりやすい病気です。
喘息の場合
喘息は気管支が細くなって息苦しくなる病気で、ひどければ夜から明け方くらいまで息苦しさが続くのですが、
朝10時くらいになると落ち着きます。
ひどいと食欲が落ちたり、もっとひどくなるとしゃべるのも苦しいのでしゃべらなくなったりするというようなことがあります。
喘息の場合は、狭くなっている気管支を拡げる薬がありますし、吸入するととても良くなります。
鼻からくる咳もある
朝起きた時や夜寝る時、お昼寝から起きた時に咳き込むというのも多いんですけど、
これはだいたい鼻水が奥の方に溜まって咳き込んでいるんです。
大人になると、鼻をかんだり自分で痰にして出したりするんですけど、赤ちゃんはそんなことしません。
立っている時は、溜まった鼻水は喉の方へ落ちて胃に入っていって、胃で殺菌されます。
しかし横になっていると、寝ている間に鼻水が溜まっていきます。
寝ている時は咳の中枢が抑えられている状態だから出ないけど、朝起きた時に、溜まった分を出さなきゃと咳を出すわけです。
これは心配ありません。耳鼻科に行くと鼻を治せと言われて延々と治療されることがあるんだけど、やめたほうがいいと思います。
赤ちゃんの多くは鼻炎の傾向があるので、季節でちょうど鼻が出やすい時期に、
鼻が溜まったりして咳が出るということはよくあるのです。
つづく
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医師:山田真(ワハハ先生)
東大医学部卒。小児科医として約50年診察を続けている。八王子中央診療所所長。
「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」代表、
育児専門誌「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」編集協力人。
「自由に生きる、笑って生きる」をモットーに、親しみやすい町医者として、
子育て中の親の強い味方。
『初めてであう小児科の本』『小児科BOOK』『子どもに薬を飲ませる前に読む本』
『育育児典』『はじめてのからだえほん』など、育児書から絵本まで著書多数。