※この記事は2018年に開催された「幼い子との接し方としつけ」講演&相談会の内容を抜粋し編集したものです。
※英語・中国語版あり
Q.わがままとどう付き合えばいい?(1歳半)
これまで食べ物をあげれば全部食べていたんですけれど、
最近「これはイヤ」とか「これは好き」などのこだわりが強くなってきました。
ベビーカーになかなか乗ってくれなかったり、自分の歩きたい方向を絶対曲げなかったり。
イヤイヤ期の始まりかなと思っています。
「こうしたい」というわがままにどこまで付き合っていけばいいのか、分かりません。
A.
1歳半ってそうよね。3歳くらいまではそうかもしれない。
わがままって皆さんがおっしゃることは、子どもの自己主張なんです。
「どうしてもこうしたい」「どうしてもこれが食べたい」という時は、
まずは子どもの主張、言い分を、ちゃんと「わかったよ」と受け止めてあげることです。
「どうしても今おやつが食べたい」と言ったら、「おやつが食べたいんだね、わかったよ」と返す。
お母さんが気持ちをわかってくれたら、子どもは気持ちが半分おさまるんです。
だけど「お食事の前だから、お食事が済んでからね」と言うと「いやだ」っていう子がいますね。
そういう時は、例えば「じゃあテーブルに乗ってるお食事を一口食べたらいいことにしようか」みたいな妥協があっていいんです。
子育てで大事なのは、例外を作っていくということなんです。「今日は特別よ、この次はダメね」というふうに。
子どもは、どうしてもセルフコントロールが弱いんです。
だからちょっと我慢してもらうことから始めてください。
そして我慢ができた時に大事なのは、褒めることです。
お食事でも、全部は食べられないけれど一口食べたら「今日は一口食べたね」って褒める。
嫌いなものを一口食べるというのは、子どもにとっては大変な努力です。
賞賛するという意味の褒めるじゃなくて、ちゃんと出来たということをお母さんは見たよ、
あなたはちゃんとやれるんだっていうことをお母さんはわかったよ、と認めるということです。
お母さんにちゃんと認めてもらうことで、子どもはセルフコントロールができるようになるのです。
しつけというのは、叱ることではない。
怖いから止める、叩かれると痛いから止めるというのはその場限りなんです。
だけど「危ないからダメよ」とか「怪我するからやめてね」というふうに注意することは、
判断を伝えるという意味で大事なんです。
危ないことを注意する時は、まず危ない物を取り上げてから「危ないからダメよ」と言うこと。
ナイフを持ってきた時に「危ないからダメよ」と言ったら、お母さんに取り上げられると思って
子どもがギュッとつかんで手を切ってしまうこともあるので、必ず危ない物を取り上げて、
それを下ろして安全な状態になって、そのあとでしっかり「ダメよ」と言うことが大事ですね。
それから、注意したことを守ったことをちゃんと褒めることも大事です。
3歳までは、自分でやっていいことと悪いことがわからないから、注意されたその場では止めます。
でも、今はダメだけどその次はどうすればいいかわからないから、たいてい親の顔を見る。
小さい子は親の顔色を見て判断するから、怖い顔をして真剣に「こら!」というのは効果があります。
いろいろ理由を並べて「こうこうこうだからダメだよ」というのは、最後まで把握しきれないから、意味がわからない。
なので、まず厳しい表情で「危ない」とか「ダメ」と注意する。
叱るというより、注意する、判断を伝える、ということです。
その積み重ねが子どもの心に溜まっていき、そのうち「こういうことをしたらダメなんだ」とわかるようになります。
相手の顔を見るというのは、ちゃんと理解を求めている子、物分りがいい子に育っていると いうことなので、
顔色を見ているということを大事にしないといけません。
いたずらが可愛いからってお母さんがニコニコしながら「ダメよ」と言ったら、
お母さんが喜んでいると思うから止めないんです。
子どもとは知恵比べ、根気比べなので、いろいろ試してみてくださいね。
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アドバイザー:内田良子氏(児童心理カウンセラー)
73年より東京都内数ヶ所の保健所にて相談活動を続け、98年から「子ども相談室・モモの部屋」を主宰し、不登校、非行、ひきこもりなどのグループ相談会を開いている。立教大学非常勤講師、NHKラジオの電話相談「子どもの心相談」アドバイザーも経験。全国各地の育児サークル、登校拒否を考える親の会、幼稚園などでも講演多数。著書『カウンセラー良子さんの子育てはなぞとき』、『幼い子のくらしとこころQ&A』『登園渋り登校しぶり』