子どものために、親、夫、妻、兄弟、家族のために……
毎日の繰り返し、ひたすら走り続けているような感覚です。
通り過ぎていく日常の風景をもう一度見つめたことありますか?
「2歳息子の食事には牛乳が欠かせない。
そして、近ごろ「自分で!自分で!」と強くいうようになり、
お互つかない手つきで牛乳を飲もうとする。
私は、いつもこういう、
「両方おててでもってね、こぼさないようにね」
けれど、毎日、毎日、牛乳がコップからこぼれていた。
もう勘弁してもらいたい。
第二子を身ごもった私は、
大きなお腹で床を拭くたびに思っていた。
その日も、私は「こぼさないでね」というのを忘れていなかった。
ところが、食事の用意ができたそのとき、
ゆったりした服が牛乳パックの角に引っかかって、
あろうことか1リットルの牛乳パックが
私の大きなお腹と正面衝突。
見る見るうちに、おなかとテーブルをつたって、床へと流れだした。
お母さんだってこぼしたじゃん!
いつも叱ってるくせに!
息子の口から出るであろう言葉を思って、
私はとっさにからだを硬くした。
しかし、私の耳に届いたのは、別の言葉だった。
「お母さん、冷たかった?」
耳を疑った。彼の温かい言葉にうろたえた。
彼のまっすぐなやさしさに戸惑った。
私をこれぽっちもせめていない。
そして、とんでもないことに気が付いた。
ああ、彼もいつも冷たい思いをしていたのだ。
牛乳がこぼれるたびに、一人ぽっちで冷たいなあと思っていたのだ。
「お母さん、だいじょうぶだよ」といいながら、
これまでたったひとりで冷たさを背負い続けた息子のこころを温めなくてはともがいていた……」
これはプレイバックシアターの会場で観客(テラー)が語った日常の話でした。プレイバックシアターでは、我々の日々の暮らしの中で起きた些細なことでも再現劇として観客のみんなに届けます。
台本も打ち合わせもありません。一瞬にして劇になった舞台を見ていた私は、まるでその場面にいたような感覚で、そして自分のことが演じられてるようにドキドキしていました。
口承文学では、語り継がれる物語に深い意味を持たせています。プレイバックシアターも個人のストーリーに深い意味があると信じています。「誰もが語りたい、感じている、考えている。」と信じて語る観客(テラー)の話に耳を傾け、体験を即興劇にし、そのストーリーを会場全体で共有されます。いつの間に、語る側と見る側の間で深い交流が行われていて、日々の忙しさのなかで見失いかけていた親としての喜びや生きがいを思い出させてくれました。「子どもっていいな、親っていいな!」そんな気持ちを心に深く刻んで会場をさりました。
何気ない日常の小さなできごとでも、それにも深い意味があります!
どんな言葉や説明よりも、プレイバックシアターは体験なしには語れません。
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今回は特別に日本プレイバックシアターのパイオニアが舞台に立ちます!
【みて、感じて、みんなの家族】プレイバックシアター公演
◆12月2日(日)10:30-12:00
◆小山台会館(武蔵小山駅駅徒歩2分)
◆1,000/1人 1,600/家族(子ども無料)
◆詳細&お申込み:
◆保育あり(200/人)
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