②「行きたくない」を受け止めてもらえなかったら?【子育てはなぞとき】講演&相談会抜粋

※この記事は2018年に開催された「園や学校生活に不安を感じたとき、親の心がまえと対応」講演&相談会の内容を抜粋し編集したものです。

英語・中国語版あり

 

 

 

子どもは、緊張や不安を抱え、通い続ける

 

学校は休まず行くのが当たり前というのは、すべての子どもが知っています。

でもそれができなくなっていく時というのは、いろんな事情を抱えています。

お友達のいじめがあったり、先生の指導がこわい。

幼稚園、保育園では特にこれが強いです。

家庭で、マンツーマンに近い形で保護されて自分のいうことややることにちゃんと目を届けてもらって、分かってもらって生活するところから、大きな集団にポンと放り込まれます。保護者がいない中で権力者である先生が厳しくするとすごく怖くなるのです。

それも、自分が厳しくされて怖いというのももちろんありますが、他の子が厳しく怒られたり罰を与えられて暗い部屋に閉じ込められたりというのが、ものすごく怖いのです。

他の子がひどい目にあっているのを見て、怖くなって行けなくなる子どもが圧倒的に多いです。

 

私が地域病院で心理相談室をやっていた時は、秋になると自家中毒になってくる子どもが多かったです。聞いてみると、運動会のシーズンで練習が厳しいということでした。

マイクで子どものことを怒鳴りつけたり脅したりしているものですから、近所から騒音がうるさい、やめてくれと電話が入るくらい厳しいのです。それで子どもたちが、普段の先生と違ってものすごく指導が厳しいというので自家中毒を起こしたり、喘息、アレルギー性のアトピー、皮膚炎なんかがひどくなってきました。

 

それから担任の先生が変わったゴールデンウイークの前後あたりで体調不良で来る子が多いです。

「頭が痛い、お腹が痛い」というのにあわせて、「気持ちが悪い、めまいがする、吐き気がする。」起立性調節障害と言われますが、学校に行くのが辛くて怖くて、朝起きて学校に行こうという気持ちにならない。起きても心も体も準備状態にならないから、血圧が上がらないんです。だから起立した時に調節できなくて、ザーッと血圧が下がってしまうのです。

学校、幼稚園に行くのが怖い。行ってるんだけどのびのび動けない。

先生が怖いから、先生に叱られれないように、今の言葉で言うと忖度して動けなくなっちゃうんですね。

そういう子どもたちが季節に合わせて、GW開け、夏休み明け、運動会や文化祭シーズン、それから冬のクリスマスや年末の時に病院に来るのです。

 

行くのが辛くなると、睡眠が不安定に

 

子どもは、朝起きて幼稚園、保育園、学校に行くのが辛いから、まず何から始まるかというと、なかなか夜寝付けなくなる

それで夜寝てから夜泣きが始まる。睡眠のリズムがあるから、寝てから1時間半くらい経つと始まって、なだめてもなかなか泣き止まない。

それから、怖い夢を見るから寝ない。どんな夢を見るかというと、黒板から漢字が雪だるまみたいに大きくなってゴロゴロ転がりだして自分を押しつぶすと。それから黒板に書いてある数字がお魚になってどんどん大きくなって自分を食べてしまうと、そういう風な悪夢を見る。

それから夜驚ですね。夜中に飛び上がって起きてものすごく怖がる。

それからおねしょが始まる子もよくいます。

そういうことで、まず睡眠で出ることが多いんです。

でもこれは親御さんたちは、学校や幼稚園保育園で何かあったのかなという風に気がつかないです。

子どもの生活習慣、寝るのが遅いから早く寝かせようといって悪戦苦闘するといった状況で、子どもは受け止めてもらえなくて不安定になります。

ストライキが始まる

 

夜なかなか寝付けないから朝起きられない。行くのが辛いから起きたくない、というより寝るのが遅いから起きられないということがあります。

やっとの事で起こしても、まず布団から出てこない。着替えをしない。顔洗ったりトイレに行くとその先は幼稚園、保育園に行くことになるので、ここで子どもはストライキを始めるんです。

着替えない、顔を洗わない、トイレに行かない、あるいはトイレに閉じこもって出てこない。

それから食事も、ハンガーストライキと思ってください。食事をなかなか食べない、遅い。

ご飯を一粒ずつ食べたりもする。食べ終わらないですよね。

でも、食べ終わってじゃあ行きましょう、もう食べなくていいと言うと、「食べるー!」と。

それから、出したものに難癖つける。ご飯を出すとパンがいい。うちにあるパンを出すと、菓子パンがいいと。そういうことで、ハンガーストライキをします。

 

それに合わせ、朝起きて幼稚園保育園に行くまでいちいちが滞る。いちいち抵抗する。これは、あたかも今までお母さんがこれまでしつけた生活習慣が次々に崩れていく感じがするんですね。ですから、ここはしつけ直さないとと、お母さんはすごい厳しくやるんです。そうすると子どもはますます誰にもわかってもらえないということで、心が傷ついて、泣いたりぐずぐず言ったり反抗的になったりします。

 

指しゃぶり、爪噛みなどのクセが出る

それに合わせて、不安から指しゃぶりをする、爪かみをする。

無理がかなさって、これ以上無理をすると堪忍袋が切れちゃいそうというくらいになると、チックが出ます。

 

チックが出た後、その後本当に行かなくなるというお子さんが、相談の現場では多いんです。

 

こういったことはやってる、でも幼稚園、保育園には行ってる。

送っていけばぐずぐず泣きながらも行っています、というケースは結構多いんです。

 

これが、登校拒否、不登校の始まりだとは親御さんたちは夢にも思っていない。

 

「私のしつけに従わなくなった、反抗的になった困った子」ということで、しつけがもう一段階厳しくなって、その結果お母さんと子どもの間にヒビが入ります。

こういう行動が子どもの生活の中で現れたら、ここが注意のしどころです。

この段階で、なだめすかして学校や幼稚園、保育園に行かせることは、ちょっと考えたほうがいいでしょう。

 

つづく

>>③心身の体調を崩し始める

 

カウンセラー:

内田良子

73年より東京都内数ヶ所の保健所にて相談活動を続け、98年から「子ども相談室・モモの部屋」を主宰し、不登校、非行、ひきこもりなどのグループ相談会を開いている。立教大学非常勤講師、NHKラジオの電話相談「子どもの心相談」アドバイザーも経験。全国各地の育児サークル、登校拒否を考える親の会、幼稚園などでも講演多数。著書『カウンセラー良子さんの子育てはなぞとき』、『幼い子のくらしとこころQ&A』『登園渋り登校しぶり』