外国人の物件探し、なぜ難しい?!【1】物件探しのポイントとお金

 

———不動産のプロに聞いてみました

 

日本に来て間もない人から、長年住んでいる人まで、外国人の困り事のランキングに、いつも上位に上がってくるのは「物件探し」です。文化、習慣、価値観、法律も異なる日本において、外国人の物件探しの難しさはどこにあるでしょうか。

こんな疑問について、日本橋にある不動産会社、株式会社シーザーシーの社長見海顕治(みうみ けんじ)さんに率直に伺ってみました。株式会社シーザーシーは、「人と人との繋がり」を大事し、新たなコミュニティの創造を目指し、中国人スタッフも常駐しており、中国人のお客さんからもとても頼りにされている街に根付いている不動産です。

株式会社シーザーシー社長 見海顕治

 

(敬称略)

JII:外国人からみて、日本の物件探しは難しいし、不思議な点もたくさんあります。それについて、オーナーや仲介の不動産屋さんの考えをぜひ知りたいと思います。それを知ることによって、何かお互いにとっていい妥協の知恵が見えてくるのではないかと思いますので、今日はぜひいろいろ教えてください。

見海:はい、僕の感覚的な部分もありますし、もしかして間違っているかもしれないけど、これまでの経験も含めて、お伝えします。

 

時代の変化を映し出す外国人のお客さん

JII:本題に入る前に、少し見海さんことも教えてください。不動産を始めてどのぐらいですか。

見海:今のお店は三年前に六本木から引っ越してきました。僕元々はデベロッパーでB2Bの仕事をしてまして、つまり不動産同士のビジネスでしたが、ある物件の仲介をきっかけに、管理を任せされて、そこからエンドのユーザーさんと直接接してきました。次第に、お客さんにもっと丁寧に、わかりやすい形にしたほうがいいと思って、直接エンドユーザー向け(B2C)に店を開くことにしました。

JII:なるほど、B2BからB2Cに方向転換されましたね。ここ数年、日本に住む外国人がどんどん増えていますが、見海さんからみて、何か変化を感じましたか。

見海:中国のお客さんに不動産を売ろうと初めて動いたのは10年前です。その仕事で北京まで行って、日本の不動産を紹介するセミナーをやりました。しかし、当時の中国は、物件がどんどん値上がりした時期でしたので、それに比べて、キャピタル(転売収益)じゃなくて、インカムゲイン(家賃収入)をねらう日本の不動産は、中国のお客さんに理解されず、全く見向けもされませんでしたね。
そのあと、リーマンショック以降、低金利が続いて、そして、東京オリンピックが決まってから、また不動産を買う動きがでてきました。最初は、香港、台湾の方が多く物件を探していました。そのあとに、中国の方も来始めているという感じです。
実際取引した外国人の方は、自分が日本に住むための物件を購入するケースや、民泊を経営したいとか、店舗を経営したいということで物件を探す人もいました。
一つ背景にあるのは、日本のビザの緩和です。2010年ぐらいから、法務所が外国人のビザを緩和しました。2013年震災以降、沖縄など特定の場所へ訪問するとマルチビザも得られる政策や、医療ツーリズムなどの影響で、多くの富裕層が日本を訪れ、実際体験しながら、骨董品や美術品などの購入が増え、その中で日本の不動産もどうかといった感じで増えてきました。

JII:なるほど。 10年前に見向きもしなかったお客さんも日本の不動産に魅力を感じるようになったということですね。そのように外国人のお客さんが増えている状況を背景に、実際日本に住む外国人が直面する課題に入っていきたいと思います。

 

第一回 押さえるべき賃貸のポイントとお金のこと

物件を借りるプロセスを理解する

JII:私は学生時代に家を借りるときは、結構苦労した記憶があります。礼金とか、敷金とか、わからないことも多かったですね。今は繁華街にいくと、礼金、敷金ゼロの物件が増えているように感じますが...

見海:昔は礼金2ヶ月、敷金2ヶ月のところが多かったですが、最近は法律の改定もあって、礼金は1ヶ月かゼロ、敷金も1かゼロのところが増えました。
それには理由があって、不動産業的な話をすると、ここ数年、いわゆる不動産ファンドが運営する物件がすごく増えています。そういう会社は、インカム(家賃収入)を最大限に増やすために、家賃をちょっと高めにして、初期投資を安くして、入居者に早く入ってもらいたいですね。
そういう物件が増えていくと、お客さんもそちらに引っ張られていくので、他の不動産も段々礼金2、敷金2を維持できなくなってきている状況です。

JII:最初に、今現在、賃貸物件を借りるときの手順を確認させて頂けます。

見海:まずは、ネット検索(自分の住みたいエリアで、間取りで、払える家賃での物件をまずなんとなく決めて検索)
→管理している不動産業者に連絡する、物件あるなしを確認する
→不動産に行く→さらに探してもらう、気に入ったものを絞る
→下見(人によるけど、3―4件)
→気に入ったものを決める
→申し込み(保証会社の手続きも含む)
→審査(大家+保証会社)
→契約(不動産で説明を受ける)
→初期費用を支払い
→入居(引っ越し)
→転入手続きなど

JII ネット気に入った物件が見つかっても、問い合わせしてみたら、もう終わりましたって言われることもよくありますね。

見海 今はまだそういうのはありますが、でも感覚的には6割ぐらいはネットで見つかってます。

 

「連帯保証人」の代わりに保証会社、キーはコミュニケーション

JII:「外国人可」という物件も増えている印象がありますが。

見海:まず、大前提として、外国人だから借りやすい、借りにくいということはあってはいけないですね。

JII:そうですよね!(賛成)

見海:いわゆるファンド系の物件は、外国人かどうかというものは一切ないです。むしろあるのは、個人のオーナーが経営している物件で、審査も自分でするというときに、そういうことがあるかもしれません。

JII:審査というのは、何を審査しますか。収入とか、あとは何かありますか

見海:何をみるかというと、結局ちゃんと収入はありますか、働いていますか、証明できますかというところです。例えば外国人であっても、ちゃんとした会社に就職して、収入証明が取れて、ビザもあって、全く借りづらいということはないですね。いまはそれが基本ですね。ただ、物件のレベル、所有者、あとは管理会社によって差がある感じですね。

JII: そうですか。保証人探しにもよく苦労しますね

見海:最近は保証会社というのが増えてきて、連帯保証人が減ってきましたね。保証会社を必須にしているパターンも増えてきています。もし家賃が払えなかったら、保証会社が代わりに保証します。保証会社の審査は同じように収入とか、仕事とか、過去に問題がないかとか。独自のルートで調べることもある、わかりやすいのはカード会社とかね。

JII:個人で審査する場合は、オーナーが自らカード会社に問い合わせますか

見海:オーナー自身はしないですけど、仲介を委託している不動産に依頼して、不動産がいろいろ調査します。たとえば保証人の収入はしっかりしるかどうか。

JII:審査は提出された書類だけで判断するのか、それでも裏をとるような調査までしますか。

見海:人によります。例えば、銀行に勤めている人が申し込んできたら、「銀行に勤めているから、しっかりしているでしょう」ということでOKになることも。逆に日本に来て間もない、まだ収入も安定しない状況の人だったら、大丈夫かなと不安になる。収入が安定するかどうかが一番大きいです。

JII:信用性や安定性のところですね。10数年前にまだ保証会社はなかったけど、大学の先生にお願いしたりして、それはそれで結構難しかったですね。

見海:いろいろな保証会社あるけど、例えば、大手は数社あります。

JII:借りたい物件を見つけたときに、保証会社の手続きも一緒にしますね。

見海:そうです。外国人で問題になるのは、日本語がわからない場合ですね。保証会社から「これ、これで契約するけどいいですか」みたいな確認が理解できないと保証してくれない可能性があります。

JII:契約の内容を理解しないと契約できませんものね。日本語がしゃべれなかったケースありましたか。

見海:ありました。日本語はしゃべれなくて、いい方でしたけど、結構苦労しました。「日本語しゃべれません」と言ったら、「難しいですね」って言われます。結局何か意思を伝えたいときに、伝わらないと困りますよね。

JII:契約書は外国語版がありますか。

見海:法律上有効なのは日本語版です。だから、「日本語わかりますか」はイコール契約の内容理解をしていますかということでもあります。外国語訳はありますが、最終的に効力を持っているのは日本語ですね。でも売買など大きな契約の場合は、英訳をつけて一緒に契約することもありますが、賃貸には普通ないですね。

 

信用情報をどう取れるかポイント

JII:収入をどう証明するかがポイントですね。あとは生活習慣ですね。

見海:信用情報をどうとれるかというところですね。

JII:信用につながる情報なら、学生の場合は、アルバイトか仕送りしかないですけど、どうしたらいいですか。

見海:親の仕送りをちゃんと証明できるものとか、学校の先生の紹介とかがあればいいかもしれない。

JII:本当は一番困っているのは学生の時期ですよね。

見海:例えば、留学生用に一棟を借りて、本国で月々の支払ってもらえばいいね。管理は日本でしてもらい、生活習慣をしっかり教えるようなものがあってもいいかもしれない(笑)。

 

下見は丁寧に確認、お金は3-4.5ヶ月分

JII:効率よく物件を探すコツありますか

見海:最初に勤務地や学校までの距離、住みたいエリアを自分で決めてもらわないとね。沿線とか、次は家賃ですね。最低はこの二つ。

JII:下見に行くときに必ず見ておくところはどんな点ですか

見海:買うと借りるは違うけど。借りる場合は、まずは駅からの距離です。家までの道を実際歩いてみることが大事。生活の利便性は整っているか、女性だったら、怖いところがないかとか。あとはセキュリティーを重視する。管理上の不具合(気持ち悪いとことがないかとか)。例えば、ゴミはちゃんと管理しているかどうか。部屋中についている設備、何がついているかを必ず確認する。窓から見た眺望。室内にいるときの音やにおいとか。日本人は特に匂うが気にするかもしれませんね

JII:なるほど、賃貸の費用を教えてもらいますか

見海:最初に支払うお金は、

家賃+管理費 1
礼金 1
敷金1
仲介手数料1
保証会社料0.5(一括と毎払い)一年目は家賃の50%、二年目から1万/年
火災保険 2万/2年

ですね、4.5ヶ月分が必要ですね。そこから調整ですね。礼金なしだったら、3.5ヶ月分仲介手数料が0.5だったら、4か月分です。

JII:保証料は住んでいる間ずっと払いますか。

見海:そうですね。年額が少し高くなりますが、保証人を探す負担がなくなります。

JII:家を借りるのはやっぱり大きな出費ですね。値引きできるポイントありますか

見海:オーナーの考えによってちょっとずつ違う。条件のいい物件を探すか、礼金、敷金、家賃のところなど、契約する前に、交渉する。人気のある物件は当然難しい。需要と供給のバランスです。言ってみるのは勝手だから、交渉してみるといいよ。管理費も家賃の一部と思ったほうがいい

JII:管理費は大家さんに払っているものではないですよね。何に使っていますか。掃除のおじさんがいれば、まだ少しイメージ湧きますが。

見海:おじさんだけじゃなくて、建物の補修とか、5年10年たったら、経年変化によって、防水などのメンテナンスなど結構お金かかりますね。月5千円とかではやっぱり足りないですね。

JII:管理費は家賃の一部とみたほうがいいね。

 

賃貸は先に入金してから契約

見海:契約までに管理会社もしく大家さんに振り込んで、入金の確認がとれたところで、契約を結びます。

JII:先に振り込みするのですね

見海:そうです、消費者的にはあれと思うかもしれないが、賃貸の場合は、ほぼ100%同時より前に入金してもらい、入金が確認とれたときに、契約して、カギを渡すことになっています。

JII:普通の契約の感覚とちょっと違いますね。

見海:ほとんどの不動産の場合は、週末の契約が多いので、木曜に入金してもらい、金曜日に入金確認を取れたら、週末に契約する。もし先に鍵を渡したら、払わなかったどうしようってなっちゃうからね。これは日本人も外国人もみんな同じです。賃貸契約はそうなっています。

見海:賃貸は数十万単位のお金だからそうですが、売買の場合はお金を渡すのと契約のタイミングは完全に同時です。

(つづく)

(文:楊淼 植松真理子)

 

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